2011年 12月 30日
明日はいよいよ大晦日です。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。 先日建長寺のある塔頭(たっちゅう)に用事があって出かけたら、まだこんな感じで紅葉が残っていた。 今年の鎌倉の紅葉は塩害で散々だったけれども、案外長持ちしていますね。正月過ぎても一部は残っているかもしれませんよ。 さて、今年もこれが最後のブログ・・・特別編ってことで、ネイチャー(自然)を離れて、今年私が観た映画を、ミシュラン流に五つ星(★★★★★)で評価してみたいと思います。 毎年恒例って感じですね。 というわけで完全な閑話(かんわ)です。こんな話でも興味のある方は続きをどうぞ。 ヒア アフター ★★★★☆ (Yahoo!=79.4点) クリント・イーストウッドがメガホンを取り、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を務めたヒューマン・ドラマ。 アメリカ人の霊能力者と、津波で臨死体験をしたフランス人の女性と、双子の兄を交通事故で亡くしたイギリスの少年が不思議な縁で出会うというお話。 アメリカ人のジョージは霊能力者として優れた才能を持って、相手の手に触れただけで、その人に関連する死者と会話をすることができる。 それを「呪われた力」だとして封印しようと一度は決心するのだが・・・。 地味な話だけれども、しっとりとした映像美、ゆったりと流れる音楽を堪能したって感じ。 何だかとても温かいものを作品から感じ取りました。よいです、こういう映画も。 ちなみに★の後の()内の得点は、Yahoo! のユーザーレビューの平均点(但し公開当時のもの)。結構信頼できます。 80点台に乗ればたいしたものだと言えます。ちょっとこの映画に関しては評価が低いですね。「地味」っていう風に感じ取った人が多かったのかもしれない。 英国王のスピーチ ★★★☆ (Yahoo!=84.4点) 第83回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞を受賞して4冠を達成した作品。実は私が映画を観たのはアカデミー賞を受賞した当日だった(映画を観たあとで知った)。 幼いころからずっと吃音(きつおん)に悩んできた英国王ジョージ6世が、おかしなスピーチ矯正の専門家と出会い、それを克服するっていう映画です。 流石アカデミー賞受賞作品ってところか、Yahoo! の評価も高い。 なるほど。いい映画だった。しっとりとした映像美もよい。 そもそもドモリがテーマになっているわけだけれども、私も喋るのは苦手な方なんで、感情移入しやすかった。 何たってヨーク公(のちのジョージ6世)と矯正家ローグとの微妙な関係がいい。 最初は相手が庶民ってことでやや見下しているヨーク公が徐々にローグに心を開いていくのだ。 そして感動のラストのスピーチ。まあ「流石」ってところなのかもしれないけれども、私はそれほど感動できなかったなあ。体調のせいかもしれない。 ちなみにヨーク公は今のエリザベス女王のお父さんです。だから子供時代のエリザベス女王も登場します。 トゥルー・グリット ★★★★ (Yahoo!=76点) 製作総指揮がスティーヴン・スピルバーグで、コーエン兄弟がメガホンを取った西部劇。「勇気ある追跡」という映画のリメイクらしいが、私は元の映画を知らない。 父親を殺された14歳の少女マティが、酔いどれ保安官のコグバーン、テキサス・レンジャーのラビーフと共に、父親の敵(かたき)を追うというお話。これもアカデミー賞の候補だったらしい。 コーエン兄弟っていうのはわりと問題作を作るらしいが、これはわりとストレートな西部劇だ。 いやあ、私ははまったなあ!まずは映画独特の質感に酔った。 最初、西部劇によく出てくる町から物語はスタートする。その町の雰囲気がそもそもいい。 そして何より主役の少女マティを演じるヘイリー・スタインフェルドがいい。ちょっと可愛げがないほど気が強い少女をうまく演じている。 「蒼井優に見えてしょうがなかった」と言っていた人がいるけれども、なるほど、彼女が14~15歳だったらこんなだったかもしれない。 とにかくコグバーンとラビーフとマティの組み合わせが絶妙で、観ていてだれるようなシーンは 1ヶ所もない。 自分の評価は★★★★かあ。★★★★☆ぐらいでもよかったかもしれない。そのくらい気に入っています。 岳 -ガク- ★★★ (Yahoo!=72.2点) 人気コミック「岳 みんなの山」を原作に、山岳遭難救助を描いた山岳ドラマ。 主演は小栗旬で、ヒロインの新人救助隊員を演じるのが長澤まさみ。 まあなんていうか、月並みな映画だった。 今年は北アルプスの常念山脈を歩いているから、そういった意味で映像美には酔ったけれども、ストーリーは月並みです。 ちなみに北アルプスの山小屋にはほぼ必ず原作のマンガが置いてあるそうです。そういえば私が泊まった常念小屋にもありましたよ。 奇跡 ★★★ (Yahoo!=80.8点) 「誰も知らない」「空気人形」などの問題作を作り続けている是枝裕和(これえだひろかず)監督の新作。 九州新幹線がすれ違う瞬間に奇跡が起きて願いが叶うと信じた小学生たちが冒険を試みるって感じの映画。 映画初主演となるお笑いコンビ「まえだまえだ」の2人が主役を務める。 いや、悪くないです。 死やら孤独やらを扱うのが好きな是枝裕和らしくもない(?)心温まる映画だったりする。 「まえだまえだ」の2人も、そして彼ら以外の子供たちも実に生き生きと演技をしている。これこそが是枝裕和監督の力量なのかもしれない。 脇を固める大人たちがまたすごい。大塚寧々、橋爪功、樹木希林、原田芳雄、オダギリジョー、阿部寛と名優揃いだ。ちょこっとしか出ていなかった長澤まさみもこの映画ではよかった。 それでも★★★かあ、厳しいなあ、私・・・。 大鹿村騒動記 ★★★☆ (Yahoo!=82.8点) 長野県の山村に300年以上も伝わる「大鹿歌舞伎」をモチーフにした喜劇。 伝統の村歌舞伎が受け継がれてきた山村で食堂を営む男のもとに、18年前に駆け落ちした妻と友人が現れたことからお話が始まる。 ご存知のように原田芳雄さんの遺作。何と私がこの映画を鑑賞した日の夜に主演の原田芳雄さんが亡くなった。 原田芳雄さんは私が高校生の頃から知っている役者だけに、ちょっとショックだった。 「赤い鳥逃げた?」(1973年)から私にとってはお馴染の原田芳雄演じる風祭善、その友達でありながら妻と駆け落ちした岸部一徳演じる治、最初は違和感を覚えていた性同一性障害の青年、ちょい役ながらも村の人々を演じる松たか子、佐藤浩市など、とにかく俳優たちが素晴らしい! 「大鹿歌舞伎の舞台を再現したクライマックスは圧巻」と言われても、歌舞伎そのものの味わい方を知らない私にはイマイチよく分からなかったけれども、その歌舞伎のあとのラストシーンが切ない。 コクリコ坂から ★★★ (Yahoo!=74.8点) 宮崎駿の息子の宮崎吾朗が「ゲド戦記」以来 5年ぶりに監督を務めるスタジオジブリ作品。 東京オリンピックの開催を目前に控えた頃、横浜のある高校で、明治時代に建てられた由緒ある建物を取り壊すべきか保存すべきかで論争が起きていた。 高校生の海と俊がそんな事件の中で出会い、心を通わせるようになるっていうお話。 Yahoo! の 74.8点という点数はジブリ映画としては低いように思うかもしれないが、実は「崖の上のポニョ」は 66.8点だから、「親父さん越え」をしている。 舞台になっているのが 1963年の横浜ってことで、主人公たちは私よりも年上とはいえ、ほぼ時代が似通っている。 海のキャラはちょっと地味。恋愛ものとしても地味。合唱のシーンは恥ずかしい。 それでも私は楽しめた。昭和の時代をよく知っているからだろう。 一方時代背景が分からない今の子供たちには理解できないんじゃないかっていう気がした。 ちなみに映画館でお金を払ってジブリ映画を観るのは「千と千尋の神隠し」以来です。 モテキ ★★★ (Yahoo!=79.4点) 金もなく恋人もいないモテない主人公藤本幸世(森山未來)に、突然モテモテの時期「モテキ」がやってくるって話。 女優陣は、長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子で、映画では特に長澤まさみがメインになっている。 前半はモロコメディー。しかし後半はわりとまともな恋愛ドラマになっている。 金もなく恋人もなく、お調子者で、自分にあまり自信がないオタクで、かといっていわゆる根暗じゃないという主人公のキャラは結構気に入った。 しかしあまりにも「今している」主人公についていけない部分も流石に感じた。 まず音楽の感性がまるで私と合わない。そもそも流れている曲や歌手があまり分からない(ただ Perfume と一緒に主人公が踊るダンスシーンはちょっといい)。 すぐにツイッターを始める「サブカル系草食男子」というジャンルがそもそも今の私とは住む世界が違い過ぎる。ひょっとして今私が今大学生ぐらいなら、そうなっていたのかもしれないけれども・・・。 ただこの映画に関しては、久しぶりに長澤まさみが健闘している。レビューを見てみてもそういう声が多い。 確かにかなり頑張っているかも。ディープキスしているし、少し乳揉まれるし(そういうことじゃないか)。 というわけで、そこそこ満足したけれども、やっぱり★★★だなあ。 ツレがうつになりまして。 ★★★★ (Yahoo!=84.4点) 仕事をバリバリこなすエリートサラリーマンの夫、「ツレ」が、ある日突然、うつ病になってしまう。 売れない漫画家をしていた妻・晴子はそんな夫に戸惑いながらも温かく接していく。 いや、よかったです。 何といってもまずはツレを演じている堺雅人と、その妻を演じている宮崎あおいが素晴らしい! 2人の演技力がとても光る映画だ。 だいたいテーマがうつ病でしょう?そして神経質そうな旦那(ツレ)の方がそのうつ病になってしまう映画だ。 普段からうつっぽい私が感情移入できないわけがない。 徐々にうつがひどくなり、ツレが会社に行けなくなってしまうところ、電車に乗るのが怖くなってしまうところ、同じく電話に出るのが怖くなってしまうところなど、まあ流石に私もそこまでなったことはないが、気持ちはとてもよく分かる。 うつ病に罹ると「自分は生きていてもしょうがない人間だ」と思うようになってしまう。 それに対し、骨董品屋の親父が「(このガラス瓶のように)割れないで存在していることにこそ意義がある」っていうシーンがある。 そう。それでいいんです。きっと。 猿の惑星:創世記(ジェネシス) ★★★★☆ (Yahoo!=77.6点) 私が元祖「猿の惑星」を見たのは小学生のときだった。テレビやビデオではなく、ちゃんと当時鎌倉にあった映画館(鎌倉名画座?)で観た。 元祖「猿の惑星」のラストシーンは本当に衝撃的だった。宇宙船が降り立った星が未来の地球だったなんて。「こんな手があったのか!」と子供心に感激した。 今回はそれに比べれば脚本的には弱いのかもしれない。ありきたりの展開と言っていいのかもしれない。 でも、まずは全編 CG で描かれた主人公シーザーなどの猿がすごい!「アバター」のときよりも更に洗練されている感じ。最早実写との違いはゼロといってもいいほどだ。 そのシーザーだちがアルツハイマー病の治療薬の副作用で知能が劇的に発達し、やがて人間たちに反乱するようになる。 映画を観ているうちに、いつの間にか自分がそんな猿たちに感情移入していくのだから、不思議なものだ。 「頑張れ!人間に負けるな!」と必死に猿たちを応援している。ニューヨークの街で大暴れするシーンは本当に胸がすかっとした。 久しぶりに映画の雰囲気を堪能したって感じだった。だから★★★★☆とほぼ満点に近い点数にしたのだ。 映画そのものの出来は★★★かもしれないが・・・。 ステキな金縛り ★★★★☆ (Yahoo!=84点) ご存知三谷幸喜監督の喜劇。 失敗ばかりしている弁護士のエミ(深津絵里)は、ある殺人事件を担当することになる。 被告人は犯行が行われたときに自分は金縛りにあっていたので完璧なアリバイがあると主張。 そのアリバイを実証するため、エミは落ち武者の幽霊、六兵衛(西田敏行)を証人として法廷に召喚させることにする・・・というお話。 ちなみに三谷幸喜監督の映画は、「ラヂオの時間」「みんなのいえ」「THE 有頂天ホテル」「ザ・マジックアワー」と全て見ているはずだが、正直前者 2つはもうあまり印象がない。で、後者2つも DVD で観ただけ。 だから映画館で彼の作品を観るのは初めてだったりしている。 で、どうだったかというと・・・。 素晴らしい!「これぞエンターテイメント!」って感じがした。 「悪人」でモントリオール映画祭で最優秀女優賞を受賞した深津絵里を筆頭に、西田敏行、阿部寛、中井貴一、佐藤浩市、深田恭子、小日向文世などのそうそうたる面々。 更に三谷映画には欠かせない役者たち(梶原善とか)もオールスターで登場している。実にゴージャスな映画なのである。 何といっても深津絵里がチャーミングだ。「悪人」のときの彼女よりも今回の方がずっとよかった。 あれでアラフォーって本当なんだろうか?・・・って感じ。 そして「喜劇」ということで、会場でも何度も爆笑が起こっていた。 私も珍しく映画館で笑っていた。 ただ、ちょっと後半が冗長か。 お父さん役の草なぎ剛が出てくるシーンなど、いらないシーンだったかもしれない。 竹内結子が一人二役をやっている姉妹の法廷シーンも、あまりうまい持っていき方って感じがしなかったし。 三谷幸喜あたりでも「完璧な脚本」って難しいんだろうか・・・。 そんなこともあって、★★★★☆にしたのだった。 もっとも三谷幸喜自身も分かっていたようで、テレビで自分で自虐的にネタにしていたっけ・・・。 借りぐらしのアリエッティ ★★★ (Yahoo!=65.8点) これは映画館ではなく先日テレビで観たもの。 まずはYahoo! のユーザーレビューの低さに驚く。 65.8点はあまりにも低すぎる気がした。 私はまずはアニメとしてのレベルの高さに驚いた。地デジで観たこともあるのかもしれないが、奇麗な映像美に酔った。 例えば暗い部分の表現とか、水滴の表現とか、まあアリエッティは小人なわけで、人間は巨人でしょう?だから人間が出す何気ない音も大きいわけじゃないですか。そのあたりの表し方もうまいと思った。 監督のマロさん(米林宏昌)の力量かなあ。彼のことはドキュメンタリーで見たことがあるから、ちょっと贔屓目に評価してしまう。 あと、音楽がとてもよかった。宮崎駿の感性とは違うものを感じた。これで 65.8点はないでしょう・・・。 でも確かに話としては地味だ。「だから何なの?」って感じはある。何を表現しようとしているのか、あまりよく分からないうちに終わってしまった感じだ。 監督のマロさんはジブリで一番のアニメーターらしいが、アニメーターとしては一流でもクリエーターとしては二流ってことなのか(脚本には宮崎駿さんも参加しているんだがなあ・・・)。 いずれにしても、最近のジブリ映画はYahoo! のユーザーレビューがいつも低い。 現在公開中の「friends もののけ島のナキ」はほとんど90点近い点数になっているのだから、アニメだと低いわけではない。 ジブリアニメも正念場かな? 50/50 フィフティ・フィフティ ★★★★☆ (Yahoo!=85.6点) 酒もタバコもやらない健康的な青年アダムが突然ガンで余命わずかと宣告されてしまうというお話。 そんな青年アダムと彼の周囲の人々の姿を描いたハートフル・ドラマだ。 タイトルになっているフィフティ・フィフティとは生存と死亡の率のことだ。つまり生存率50%のガンってわけ。 こう書くと、「またその手のお涙頂戴型の映画か」と思うかもしれない。ところがこれがまた全然違う。 そもそもこの映画、セス・ローゲンというコメディー俳優の親友で、ガンを克服した脚本家ウィル・ライザーの実話を基にしている。 そんなこともあってか、コメディー仕立てのドラマになっている。 そのコメディーの部分とドラマの部分との配合が絶妙なのだ。 例えば、主人公の悪友のカイルはアダムと一緒に女の子をナンパしようとする。そのとき、不謹慎にもガンをエサに女性の心をつかもうとする。 そもそも悪友のカイルは女性をナンパすることばかりを考えている。だから露骨な台詞もポンポン飛び出す。このあたりがPG-12指定になっている所以(ゆえん)だろう。 その一方で、ガンへの恐怖から、主人公のアダムが友達やセラピストの女性に当たり散らすようなシーンもある。 ちゃんとガンという病気の怖さもしっかりと描いているのだ。 そのあたりのバランスが本当に素晴らしい。 久しぶりに「地味だけれども良質な映画を観た」って感じがした。「ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ」を思い出してしまった。 だけどやはり地味過ぎるのか、平日とはいえ、7~8人しかお客さん、いなかったなあ。 まだ一部の映画館で上映しているんで、みんなにお薦めしたい映画です。 というわけで、他にも何本かは観たけれども、まあキリがないんでこんなところで・・・。 それでは皆さん、よいお年を・・・。
by JunMorosawA
| 2011-12-30 19:38
| 閑話・その他
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