2011年 09月 10日
北アルプス常念山脈縦走記 その14
身長は 174cmあるのに体重はわずか 55kgの貧相な体つき。
おまけに過敏性腸症候群気味で年中胃腸の調子がぱっとしないという、虚弱体質の中年男が北アルプスの山に挑むというお話。

常念小屋で一泊した我々は、2日目の常念山脈縦走を始めたのであった。




● 淡々と縦走を続ける

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淡々と縦走を続ける。山は基本的に歩くことしかすることがないのだから、歩くしかない。
「それの何処が楽しいんだ」と問われると答えに窮してしまうが、無心になって淡々と歩くことが、案外楽しものなのだ。

相変わらず槍・穂高連峰は雲に包まれていて、形がはっきりとしない。これでは素人にはどのあたりに槍ヶ岳があるのか、皆目見当がつかない。

関東の山を歩いているときには富士山を拝みたいと思うもの。それと同じように北アルプスの山を歩いているときには、「北アルプスのランドマーク」と呼ばれている槍ヶ岳を拝んでみたいと思うものだ。

思わずすれ違った人に、「まだ槍ヶ岳を一度も見てないんですよ」と愚痴をこぼしたら、「きのうの午前中はよく見えてたんですよねえ」と言われてしまった。
ちょっと運がないな。縦走の今日という日にこんな天候なんて・・・。

しかしいいこともある。こんな天候だからこそ強い日差しに悩まされることがなく、快適に歩くことができた。
だいたい我々が歩いてる稜線は標高でいうと 2600m台のはず。となれば気温も地元鎌倉よりは 15度は低いはずだ。

例えば私の地元鎌倉が猛暑で33度だったとしても、ここは18度・・・。
まあ別世界と言っていいだろう。天空の世界と言ってもいいかもしれない。

だから、昨夜は登りでバテそうになったY氏(わいし)も、ご来光を拝んだときに息切れを起こした私も、淡々と歩けていたのだ。

淡々と歩く・・・これが縦走である。

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そして淡々と歩いたら、たまに休憩する・・・これが縦走である。

ここで私は午後の紅茶ストレート・ティーと共に「うすあわせ」というお菓子を食べる。

おいしい。幸せ。
ただ午後の紅茶はもう残り少なくなってしまった。寂しい。
もっと持ってくればよかった。しかしその分重くなる。難しいところだ。

一方写真に写っているY氏は、2年前に購入したという板チョコを取り出した。
何で2年前のチョコなのかというと、2年前に富士登山を敢行しようとしたときに買ったものを、そのまま冷蔵庫に仕舞いっぱなしにしていたというのだ。

「そんなもの食えるか!」と思いながらも少しいただいた。
こっちもおいしい。幸せ。

ちなみにY氏の後方に写っている白いものは雪渓(せっけい:高山の斜面のくぼみや谷に、夏になってもなお雪がとけずに大きく残ったもの)だ。
あらためて「我々は今北アルプスにいるんだなあ」ということを実感する。

● お花畑

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9時20分、左右に高山植物が咲き乱れている場所に遭遇。
お花畑だ!

淡々と縦走を続けていると、突如このようなお花畑に遭遇する。これが縦走の大きな楽しみの一つになっている。

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例えばこのピンク色のかわいらしい花はハクサンフウロ。
ハクサンフウロ(白山風露)はフウロソウ科の多年草で、本州中部以北(伊吹山が南限)の亜高山帯~高山帯の草地に生える。単にフウロソウとも呼ぶようだ。

お花畑の主役の一つなのに、例えば私の場合、これを見るのも生まれて初めてだったりする。

これが興奮しないわけがない。「おお!あっちにも!こっちにも!」と何枚も写真を撮っていた。

今回三脚を持ってこなかったことがいかにも悔やまれるが、なるべくひじを地面に付けるなどして安定させ、慎重に撮影した。
ただ稜線上は風が強い。根気よく風が収まるのを待たなければならない。これがなかなか大変だったりする。

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こちらはチングルマ。やはり代表的な高山植物の一つだ。

どうみても草花にしか見えないが、実はバラ科の落葉小低木。つまりこれでも木花だったりする。
雄しべ、雌しべともに多数あるのが特徴で、その黄色がとてもよく目立つ。

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そして、信じられないかもしれないが、こちらもチングルマ。

花後に花柱が伸びて放射状に広がってこのようになる。
チングルマはという名は、この形が子供の風車(かざぐるま)に見えたことから稚児車(ちごくるま)から転じて付けられたのだ。

実は私、こちらの方には去年木曽の御嶽山で出合っている。しかし花の方に出合うのは今回が初めてである。
それは去年は8月の下旬だったのに対し、今年は8月の半ばで時期が少し早いせいだ。

テンションが上がる!

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こちらの紫の花は、多分ゴマノハグサ科のヨツバシオガマ(四葉塩釜)。
もちろんこちらも初遭遇。

出合う花が一つ一つ初遭遇だなんて、何て幸せなんだろう!

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おっと!まだあるぞ!とても小さくて標準ズームレンズじゃこの程度の大きさにしか写せないこの花は、恐らくツガザクラの仲間アオノツガザクラ(青の栂桜)だ。
ツガザクラはツツジ科の常緑小低木だから、こちらも草花ではなく木花なんですよ、こんなに小さいのに。

しかしすごいなあ。こんなに次々に高山植物が現れるなんて。まるで夢のようだ。

私はこのお花畑で15分間足止めをくらってしまった。
これでよい。常念岳をカットした今日は、どうせ時間は山ほどあるのだから・・・。

それと私がパーティー登山を好まない理由がここにある。もし何処かのパーティーに属していたら、こんな風に思う存分高山植物を撮影することなどは決してできやしない。

パーティー登山は海外旅行のパックツアーに似ている。決められた名所を決められた予定通りに次々に見ていくという点で。

パックツアーにはパックツアーならではのよさもあるだろう。旅費が安くなるとか、ちゃんと添乗員がつくとか、危険な目に遭うことが少ないとか。

しかし、気に入った場所ならば 30分でも 1時間でもその場所に留まるというような自由さはない。いつまでも流れる雲をぼお~っと眺めているということもできない。
こういうことこそが旅の醍醐味だと思うのだが、どうだろう?

● 一向に近づかない大天井岳

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最早10時近くなっていた。いくつもピークを超えているのに、9時半の到着予定時間はとっくに過ぎているのに、一向に大天井岳(おてんしょうだけ)が近づいてこない。
っていうか、その前の通過ポイントの東天井岳はいったい何処にあったんだろう?とうとう分からないまま通り過ぎてしまった。

そして相変わらず山の上部がご覧のように雲に覆われてしまっていていかにも残念。いったい槍ヶ岳はこのままずっと姿を現さないつもりなのか・・・。

でもひょっとしたらこれは贅沢な悩みなのかもしれない。
思えば 13年前にNHKの「中高年のための登山学」で山内賢さんたちが中房温泉→燕岳→大天井岳→槍ヶ岳と歩いたときもほとんどずっと曇っていた。

一昨年、やはりNHKの番組でルー大柴が田部井淳子さんと燕岳に登ったときには激しい雨が降っていた。
雨に降られないだけましか・・・。

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ちょっとめげかけていたとき、忽然と正面に山小屋が見えてきた。

お昼を食べる予定の大天荘だ!
ってことはその後方のピークが大天井岳か!

興奮気味に山小屋に近づいていった我々であった・・・。

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by JunMorosawA | 2011-09-10 07:59 | 山歩き&花 | Comments(0)


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