野の花を求めて富士急行禾生(かせい)駅の近くにある九鬼山(くきやま)に乗り込んだ私。
今回はその最終回、幻のスミレとの出合いの話だ。
朝8時40分、北鎌倉から3時間近くかけて富士急行の禾生(かせい)駅に到着した私。
駅を降りて国道を大月方面に戻り、落合橋で朝日川を渡ったのち、国道と分かれて右に戻るように進んだところに登山口がある。
9時過ぎにその登山口から歩き始め、10時半頃、弥生峠という場所に到着。これで無事稜線に達したことになる。
稜線上でしばしば目にしたのがこのスミレだ。
名前はエイザンスレミ。あの比叡山からこの名がついたらしいが、何故エイザンスレミと呼ばれるようになったかはあまりはっきりとしていないらしい。
特徴は何といってもギザギザに避けた葉っぱにある。こんな葉っぱをしたスミレは他にはないからすぐに分かる。
ところがである、この葉っぱがもっと徹底的に細かく切れ込んでいるスミレがある。
その名はヒゴスミレ。はっきりいってかなりの希少種で、「スミレの山」と呼ばれている高尾山でも滅多に発見できない。
っていうか、私は一度も見たことがなかった。つまり私にとってヒゴスミレはまさに「幻のスミレ」だった・・・。
新緑の目立ち始めた緩やかな斜面を登っていく。この日はご覧のような薄曇り状態。野の花の撮影には最適な天候だ。
で、ここらに「あいつ」が咲いていた!
見よ!このぎざぎざの葉っぱ!まさにヒゴスミレに違いない!
私は興奮した。しかし冷静にならなければ!
そこでヒゴスミレの特徴をあらためて確認した。
[花色] 白色。中心部は淡い黄緑色
[花形] 直径1.5~2㎝前後。エイザンスミレに比べ花弁の縁は波打たない
[側弁] 側弁の基部には毛がある
[ 距 ] 太め。毛は無い
[葉形] 基部は完全に五裂する
[葉表] 葉裏共に緑
側弁というのは左右の花びらのことだ。ご覧のとおりちゃんと側弁の基部に毛がある。
白色で中心部は淡い黄緑色という花の色の条件にも合っている。
距(きょ)というのは花の後ろのでっぱりのことだ。スミレを見分けるときの重要なポイントになる。
ご覧のように太めで毛は無い。
間違いない!ヒゴスミレだ!
流石に私もいい加減な手持ち撮影じゃなく、きちんと三脚を立てて何枚も撮影した。
それでよかった。ヒゴスミレはこの場所でたった2株発見できただけで、もう二度と現れることはなかったのだから・・・。
満足して九鬼山を後にする。後半は風邪の影響で流石にバテ始めた。そして帰りの電車の中で咳が出てまいった。
でも満足感で一杯の今回の山行(さんこう)だった・・・。